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学パロリンミク。というより完全リン→ミクです。あくまでリン→ミクです、ミク→リンでなくリン→ミク(→レン)です。大事な事なので言い方を変えて二回言いました。

 「リンちゃん」

 透き通るような声が呼ぶ。
 その髪も、抜けるように白い肌も、柔らかくすぼめられた唇も。全てが水のように澄んで、流れている。

 「リンちゃん」

 高く通った声が名前を呼ぶ時、心にいつも白鴉が飛び去る。青い空を切り裂く、真っ白な美しい白鴉。それが、ミクだった。

 「リンちゃん、帰ろ」
 「………何度も呼ばなくても聞こえる、うるさい」
 「だったら返事してくれればいいのに」

 重い腰を上げるように、のろのろと立ち上がるとミクはくすりと笑った。放課後の教室は既に誰もいなくて、少女達の笑い声だけが忘れ物として小さく取り残されていた。随分長く眠ってしまったらしい、と、クラクラする頭で時計を見上げる。5時。最終下校の放送が響く。

 「もう、どうしてこんな時間まで眠ったり出来るの?リンちゃんって本当によく寝るよね」
 「じゃああんたもよくこんな時間まで歌なんて歌ってられるね。わざわざ放課後にマンツーマンレッスンする教師も教師だけど」

 主に後半に皮肉を込めて返すと、「私は部活だからいいんだよ」とミクは笑ってまるでそれを聞き入れなかった。いや、聞いてなかったのか。皮肉の意味も分からなかったのだろう。それをいいことにあの変態教師、とわざわざミクを放課後に連れ出した音楽教師に腹が立つ。さぞや楽しく個人指導したんだろう。保護者に噂でも流してやろうか。

 「リンちゃんてば、もう、まだ寝ぼけてるの?早く起きて、帰ろう」

 憎々しげに伸びた爪を掻いていると、何をまた勘違いしたのか(はたまた見たまんま受け止めたのか)ミクは腰に手を当て、年上ぶった態度であたしを叱ってみせた。『幼なじみで年下の女の子』を、お姉さんらしく面倒見てあげる自分に酔っている姿だ。あたしはミクのそんな姿が1番嫌いで、机の上に置いていた鞄を無造作に取り、肩に掛ける。突然跳び起きたようにも見えるあたしに一瞬きょとんとしたミクをの横を通り過ぎて、扉の前で振り向いた。「いつまでぼけっとしてんのミク。早く帰るんでしょ」と余裕たっぷりに言ってやる。
 途端、ミクは顔を真っ赤にして、握り拳を意味もなく胸の辺りに持ち上げる。私の方がお姉さんなのに!とでも言いたげな悔しそうな表情で、「もうっ!」と一言叫んでから慌ててあたしの隣に駆け寄って来た。もう、という言葉はミクの口癖だ。その一連の仕種は小動物のように可愛くて、思わず笑いながら扉を開ける。少女の笑い声はまだぽつりと取り残されていた。


 「リンちゃんはどうして私の事呼び捨てにするの?私の方が先輩なのに、それに昔はミク姉って言ってたじゃない」
 「そんな事言ったって、昔は先輩じゃなかったのに学校にいる間だけ先輩呼びなんて、器用な真似出来ないし。ミクはあたしの姉さんじゃないからミク姉じゃないって最近気付いたし」
 「もう!リンちゃんったらいつからそんなに天邪鬼になっちゃったの!?昔はあんなに可愛かったのに………」
 「二つしか違わないのにその言い方、年寄りくさいですよ?センパイ」

 にたりと笑って顔を覗き込むと、やっぱりミクは白い頬を真っ赤に染めて、所在無さげに視線を逸らした。細い指先に掴まれた、紺色のスカートが夕日を浴びて翻る。こんな時に、あたしは自分がどうしてもこの人の心を捕らえられない事を知る。当たり前か。女だし、『妹みたいな女の子』だし、何よりミクの心には既に他の奴が巣食ってる。

 ミクは綺麗だ。あたしはこれ程綺麗、という言葉が似合う人間を、他には見た事がない。TVを独占する人間達や、雑誌の頁を我が物顔でポーズを決める人間なんて、あたしに言わせればただの猿人類だった。そこらを歩いている人と変わらない。
 けれど、ミクだけは違う。流れるような長い髪も、白い頬も。小鳥の囀りのような声も、全てが綺麗だった。恋を砂糖菓子だと思い込んで、いつか王子様が自分を迎えに来てくれると信じるような、馬鹿な女の典型例。なのに、その馬鹿さ加減がどうしたって、ミクの綺麗さを引き立てるのだ。初めて出会ったあの日から、ミクの美しさはどうしてもあたしを惹き付けた。だから、ミクの側にいようと決めた。幼い時に手を伸ばされたあの時から、この美しさを守ろうと決めた。決して届かない、騎士の忠誠。馬鹿なお姫様にはそれくらいがちょうどいいと思って。

 ミクは多分あたしを知らない。その目に映るのは、斜に構えた強がりたがりの女の子だろう。あたしが白いリボンを外した理由も、兎のぬいぐるみを捨てた理由も、ミクは知らない。知る筈がない。それでも、構わなかった。シャツとスカートだけのシンプルな学生服に身を包んで、メンズ向けのごつごつしたシルバーアクセサリーだけを集めたあたしの精一杯の恋心なんて、気付かれたとしても届く筈がないのだから。


 「それにしても、リンちゃんクラスに起こしてくれる人くらいいないの?流石に5時まで寝続けるっておかしいと思うけど」
 「………さあ、毎度の事だから慣れたんじゃない?」

 全くもう、と呆れたように溜息を吐いたミクに、こっちが呆れてしまいそうだった。わざわざ放課後に眠る人間が、いる訳無いじゃん。あんたが来る少し前まで本読んでたし。気付かないなんてホント馬鹿。そこが、どうしようもなく愛おしい。

 「私が起こしてあげるからいいけど、ちゃんと一人で起きれるようにならなきゃ駄目だよ……お家の人が心配するでしょ」

 控え目に、恐らく自然に言ったつもりなのであろう小さな呟きに、心臓が握り潰された気分になった。家にあたし以外の人間なんて、一人しかいないことはミクも重々承知の筈だ。敢えて名前をぼかされた人物が、敢えて落とされた声のトーンが、あたしの心臓に纏わり付いてぎゅうぎゅうと締め付ける。いずれ、ミクが恋を知る事は分かっていた。王子様が見付かる間での、ささやかな幸せを味わいたかった。なのに、ミクが選んだ男はあたしの、あたしのもう一つの影だった。

 「……そーだね。今頃家で大騒ぎかも。いつまで経っても過保護なんだからホントに困る」
 「あは、レン君?まだシスコンっぷりは健在なんだねぇ……お姉ちゃんが心配なんだよ」

 にこにこ笑いながら小突いて来るミクに、やめてよと身をよじる。クスクス笑う少女の声が、馴染みある通学路を青く染めた。

 あたしはミクが好きだった。友達としてじゃなくて、ましてやお姉さんとしてでもなくて、純粋に彼女を愛してた。届けるわけでもなくひっそりと育てた恋心を、ただ胸に抱き続けるだけの健気な恋。なのにミクは、あたしのささやかな愛を踏みにじって、その先にあるあたしの可能性に焦がれ始めた。あたしの双子の弟。似たような顔に似たような性格。違うのは精々雄か雌か。
 ミクをずっと追い掛けていたあたしだから、簡単にそれに気付いてしまった。ミクの眼差しを追い続け、辿り着いた先がまさかのあたしの内側。ミクはあたしの隣にいる間、あたしの中にレンを見ている。それに気付いた時、余りのショックにリボンを破いて、兎のぬいぐるみは手足を千切って捨ててしまった。瞼が腫れ上がるまで涙を流したのは、あれが初めてだ。
 もし、あたしが男だったら。あたしが男であったなら、ミクはあたしを見てくれた?友達でもなく妹でもなく、あたしの事を選んでくれた?浮かんでは消える恨み言のような言葉達に、思わず唇を噛み締める。秋になり始めた夕暮れは、シャツ一枚じゃ少し寒い。ブラウンのカーディガンを着込んだミクの手の暖かさに、触れてみたいと思った。伸ばせばきっと、受け止めてくれるだろう。けどそれは、なんの解決にもなっていない。

 「……ねえ、今日家来ない?」
 「え?」
 「アイツ今日バイトないの。家で夕飯作ってると思うから、食べてきなよ」
 「え、え?でも、こんな急に、迷惑じゃない?」
 「いーじゃんたかが一人分。作るのあたしじゃないしアイツだし、何とかと鋏は使いようってね」

 軽く言ってみせると、ぱちくりと長い睫毛を瞬かせていたミクは、やがてくすりと笑った。「そんな事言っちゃレン君可哀相だよ」と言う彼女の、白い頬を柔らかく染めていく色をあたしは知らない。あたしの知っている恋の色は、いつの間にか青になっていた。それは溜まった涙の池だ。少女に恋した哀れな少女は、結局自分の流した涙に沈む。これは悲劇でも何でもなくて、ただ有り触れた恋の物語なのかもしれない。有り触れた恋と有り触れた恋の、有り触れた一つの終末だ。
 あたしの届かなかった恋の先の、綺麗な少女の綺麗な恋。それは一体、どんな結末を迎えるのだろうか。多分あたしの知る所では無いのだろう。ミクだって、あたしの恋の結末には目もくれなかったのだから。

 

 




 

 

+++++

百合ならリン総攻め派です。というより攻めリンちゃんが好きなんです。ちょっと斜に構えてるリンちゃんとか常識人なリンちゃんが好きだから仕方ないね!
レンが羨ましくて羨ましくてしょうがなくてレンになりたいんだけど男にはなれないリンちゃんとか可愛くて仕方ないです。だからこのリンちゃんは口調とか態度が若干レン君ちっくなのですよ。本人も意識しないうちにレンっぽい立ち振る舞いをしてしまうリンちゃんが可愛くてry

とかなんか珍しく攻め萌えしてる女の子がリンちゃんなのですが、このままで終わる私ではない。普通にこのお宅はリン→ミク→レン→リンで妄想してました。レン君が腹黒過ぎて多分レンミクにはならない。どう転んでも禁忌やでぇ……。

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