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書こう書こうと思っている話があると、なぜか合間にのんびり書いてる話が書き終わる不思議。
鏡音がまさかのピアスとか開ける話です。俺の中二フォルダが火を吹くぜ!って感じの話です。でも割に厨二らしくないです。貴方のスルースキルが試される瞬間です。レンリンです。人間です。

 「痛いかな」

 掲げた小さな四角をちろちろと夕日に翳しながら、ぽつりとリンが呟いた。赤み掛かった光に照らされて、白い小さなピアッサーはひらひらと色を変えていく。念入りに針の部分をアルコールで消毒しながら、「そりゃあね」と振り向きもしないでレンは返した。

 「体に穴開けるんだから、痛くない方がおかしいよ」
 「でも、痛くない人は痛く無いんだって。なんでかな」
 「痛みに鈍感なんじゃないの」

 熱心に手を動かし、リンの方をちらりとも見ずに言われた言葉に、僅かな刺を感じるのは気のせいだろうか。怒ってるのかな、とほんの少しの不安を感じて、リンは翳していたピアッサーをぽろりとベットの上に落とした。薄日が差し込む部屋の中で、これから意味も無く自分の体を傷付けるのだと考えると、耳たぶが既にちくりと痛んだ。

 「リンは痛いの嫌?」
 「……嫌。怖いもの」
 「じゃあ、止める?」

 手を止め、レンはベットに仰向けに寝転んだリンの方を振り向いた。僅かな気配に、首を傾けるだけでリンはレンと向き合う。机の電気スタンドがレンを後ろから照らし、逆光で少し暗くなったその顔は、微かに微笑んでいるように見えた。リンにしか向けられる事のない優しげな笑みに、静かにリンは首を振る。「止めない」 そう決めたのだ。リンの言葉に、どこか満足そうに「そう」と頷くと、漸くレンはアルコールの染み込んだ脱脂綿から手を離した。リンが持つのと同じそれを手にレンが立ち上がると、リンもまた気怠く横たえていた体を起こす。

 「きっと痛いのは一瞬だから、大丈夫だよ」
 「……なんか、嬉しそうね。レンは痛いのが楽しいみたい」
 「うん。多分リンを傷付けるのがすっごい楽しいんだと思う」

 なにそれ、とリンが笑い、レンも笑ってそれに答えた。日は急速に傾き、部屋の中はどんどん暗くなっていく。リンの側に膝を付いて、レンがベットに乗り上げると、両手を広げてリンはそれを迎えた。掌が背中に回り、ぎゅうと抱きしめ合いながら、ゆっくりとリンに体重が掛かる。再びさっきと同じように仰向けに寝転がると、目に映るのは、無機質な天井ではなくて愛しい半身の姿だった。

 「ねえ、あたしセカンドピアスは可愛いのがいい」
 「今からその話かよ。可愛いのは俺付けられないからやだ」
 「ハートのやつとか、良いじゃない。レンも似合うよ?きっと可愛い」
 「やだよ。どうせだったら髑髏とかにしようぜ」
 「やだぁそんなの、可愛くないもん」

 額を付き合わせながら、くすくすと二人は笑い合う。ほんの些細な秘密と会話。そんなものを繰り返しながら、ふともう何処にも戻れない自分に気が付いたのは、どちらだろうか。恐らく二人共だろう。なぜなら彼らは双子なのだから。

 「………ねえ、レン」

 しばらく戯れのような触れ合いを繰り返してから、ふとリンがレンの名前を呼んだ。額を合わせたまま瞳を閉じて、両手で頬を包み込んでくるリンに、同じように瞳を閉じて、ん、と小さくレンは返す。

 「もう、どうにもならないんだねぇ、あたし達」

 まるで、今日の天気は晴れだったねぇ、と何気ない事を話すような口調で、リンはそう言った。感慨も後悔も感じられない、けれどどうにもしようのない、事実だった。出来れば見たく無かったけれど、目を反らすことの出来ないもの。
 リンの手に自分の手を重ねて、口にするまでもなくレンは頷く。もう戻れない。進むことも出来ない。ならば、何処までも二人一緒に、落ちる所まで落ちてしまおうではないか。どちらにしても、二人にはそれしか残されていないのだから。

 「ならないよ、どうにも」
 「そっか」
 「リンは、どうにかしたかった?」
 「んーん。レンといられれば、それで良いよ」
 「……そっか」

 瞳を閉じて、手を重ね合わせたまま、そっと唇を重ねた。色が消え、音が消え、後には温く触れるそれだけが残された。何もかもが二人に支配される。それが、合図だった。
 リンは右手、レンは左手にそれぞれもった、小さなピアッサーを互いの耳に装着する。「……痛いのは嫌だけど、あたしもちょっと楽しみかなあ、」とくすりと呟いたリンに、少しだけレンが瞼を開けると、同じようにうすらと瞳を開いたリンが、嬉しそうに笑っていた。

 「レンがくれるものだったら、痛いのでも好き」
 「…………」
 「それに、愛してるから傷付け合うって、素敵だと思わない?」

 返事の代わりに、もう一度口付ける。すると、背中に回っていたリンの左手が、ぎゅっとレンの服を掴んだ。同じように、回した腕で強くリンを抱き寄せながら、ピアッサーを掴む指にも力が篭る。互いに体を強く抱き寄せ、そしてまた抱き寄せられて、示し合わせたようにほぼ同じタイミングで、指先にぐっと力を込めた。無機質な針が肌に突き刺さる。ぶちりと大きな音がして、鋭い痛みと痺れ、そして熱さが瞬時に体を巡ったが、すぐに消えた。



















 「だから、ハートはいやだっつってんだろ?外歩けねーよ」
 「えぇ~良いじゃない、可愛いでしょ?それに安いし」
 「いやなものはい、や、だ。俺こういうのがいい。ほらほら」
 「もぉーなんでレンってばこういうおどろおどろしいのが好きなの!?それにこれ高いじゃない!」

 すっかり日の射さなくなった窓にカーテンを引き、白い電球の明かりの下で二人顔を寄せ合って雑誌をめくる。雑誌を持つレンの腕に両腕を絡めて、肩の窪みに顎を乗せたリンの右耳には、飾り気のない質素なファーストピアス。レンの左耳にも同様のものが揺れていて、時折面白そうにそれを突いては、痛いから止めろ、とレンに振り払われていた。そんな戯れ合いをやはり繰り返しながら、二人でピアスのカタログを熱心に見つめる。
 心配していた程の痛みは無く、あっさりと体は不純を受け入れた。一滴だけ、恐怖の余り零れた涙も、レンに拭われ今は無い。ただ、これからの手入れが大変だろうなあと、リンは自らの耳たぶを触りながらそう思った。するとすぐに、「あんまり触んなよ」とレンに手を取られ、諌められる。

 「なによ、傷付けるのが楽しみーとか、ドS発言してた癖に」
 「痛がるリンが見たかっただけで、ホールが膿んで半泣きになるリンは見たくありません。そっちこそ痛いのも好きーとかドM発言してた癖に」
 「ちょっ、そんな事言ってないわよ!変な所だけ切り取らないで!」
 「ニュアンスニュアンス。同じようなもんだろ?」
 「全然違う!」

 ぐりぐり、と肩に乗せていた頭を顎の下辺りに押し付けると、声を上げて笑ったレンが両手でわしゃわしゃとリンの髪を掻き交ぜた。しばらくそうして声を上げてふざけ合っていた二人だったが、やがてレンがリンを抱えたままベットに倒れ込んだ。ぼすり、と背中から倒れたレンの上で、リンは体を少しだけ起こす。ちょうど、先程とは体勢が逆転した形で、皺の寄ったシーツに手を付いてリンはレンを見下ろした。
 レンの左耳のピアスと、リンの右耳のピアス。二つ合わせてようやく両方が揃うそれは、お互いが一人では不完全であるという印だった。だからこそレンは、痛みを伴わせたかったのだろう。その気持ちは、それこそ痛い程にリンにもよく分かる。例えどちらかが望んでも、永遠消える事のない醜くて愛おしい、証。

 「……お姉ちゃんになんて言い訳しようか」
 「今更言い訳したって無駄だろ。開き直って真っ向から謝るしかない」
 「じゃあ酒瓶飛んで来たらレンが身代わりになってね」
 「……普通に兄さん楯にするし」

 ぽすりと起こしていた身体を倒し、ごろごろと首筋に擦り寄ってくるリンの髪を撫でると、ふと指先にピアスが当たった。目立つ事のない小さなピアスだったが、それは確かに、リンを傷付けていた。真っ白くどこも欠けることの無かったリンの身体に、二度と塞がる事のない傷。付けたのは、確かに自分だ。その醜い傷に、せめてもの贖罪を込めてそっと唇を寄せると、微かな血の味がした気がした。猫の様に身を攀っていたリンが、動きを止める。悪戯な期待を込めた瞳をくりくりとさせて、レンを見上げた。

 「これは、首輪の代わり」
 「………そう」
 「離れられないんでしょ?手遅れだよ。だからずっと一緒」
 「うん」
 「それで、いつか、その日が来たら、レンをあたしに頂戴」
 「今は?」
 「今は駄目。あたしにはまだ、レンが必要だもの」

 そう言って、リンは白くふっくらとした頬に少女らしい笑みを浮かべた。開いた唇の隙間から、尖った八重歯がちらりと覗く。それは到底レンには真似出来るものではなく、二つが重なり合っていた頃は、既に淡い影となって、それぞれに薄く被さるだけだった。それでもいい。それでいい。二人でしか出来ない事が、この世界には溢れている。













+++++
ピアスである意味が無くなった辺りから、やる気が無くなっているのが手に取る様にわかりますね。
あと私はピアス開けてないです。だからピアスを開ける辺りの描写を極力省こうとしているのです。そして相変わらず彼らが何言ってるのかさっぱりわからないです。

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