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8/31みくたんおめでとう!なリンとミクの話。学パロ。リンミク風味のようなミク→リン風味のようなを目指しているのに拭い切れないバナナの影。
以前携帯日記の方に載せた、ギターとリボンと何とかかんとかとかいう話の続編的な立ち位置です。一応前回の話が載ってる記事はこちら→【バナナ】 
多分割かし上の方に置いてあるかと。

あと普通に遅刻しました今日は9/3です。投稿日時は嘘つきましたテヘ。

 

 


 「そういえば、初音先輩って今日誕生日なんですか?」

 床に置かれた、小さめなオレンジのキャリーバック。散らばった小物達。少し雑に畳まれたシャツに手を伸ばした所で、私の動きは一旦止まった。二週間程の短い帰省から帰って来たばかりの後輩が、何気なく口にしたその言葉で、私は初めて今日が自分の生まれた日だと気が付いた。

 「あ、本当だ、私今日誕生日だ」
 「なんかおかしくないですかそのリアクション……とりあえずおめでとうございます」
 「とりあえずって……ああうんとりあえずありがとうございます」

 とりあえずなんて言われてしまった今年最初のお祝いには、私もとりあえずと返すしかない。けれど、窓の外はもう青と赤が混ざり合い、夕日が夜に溶けていく寸前で、お祝いを言われただけマシだろうか。友達に誕生日を祝ってもらえない事には慣れているけれど、こんなに軽い調子で祝われると逆に悲しい。まあ、そんな祝われ方でもちょっと嬉しい自分が1番悲しいけど。これが、夏休みの終わりに生まれた学生の可哀相な運命だ。

 「8月の終わりなんてある意味すごい誕生日ですね。パーティーとか開いた事あるんですか?」
 「まさか。酷い言われ様だったよー?小学校の時なんか、ミクの誕生日一生来なければ良いのにとか言われた」
 「あはは、まあ気持ちは分からないでもないですけどね」

 溜息をつく私に、向日葵のような笑顔でリンちゃんはからからと笑った。その口元には、相変わらず甘い香りのロリポップ。実家に帰っている間にも、それを舐め続けたのだろうか、と思うと、よく飽きないよなあといっそ関心してしまう。いつの間にか私の中で、その甘い香りがリンちゃんの匂いになっていた。


 普段寮で暮らしている生徒の大半は、夏休みや冬休みに入ると各々好きな時にふらりと帰省する。
 その中で、この夏実家に帰えらず学校にいた居残り組の私は、こうして夏休みが終わるギリギリに帰って来た後輩の手伝いをしているという訳だ。本当は、私も一度くらい家に顔を出したかったのだけれど、高等部からの入試でこの春入学したばかりの身に、ホームシックを引き起こすような事はしないのが吉だった。といっても、夏休みの間はほとんど誰もが家に帰っていて、逆に寂しくて居残りのメイコ先生に一緒に寝てくださいとせがんでしまうくらいだったのだけれど(勿論冗談めかして)(あ、思い出すと凄く恥ずかしい)
 リンちゃんは、本来ここにいるべき同室のぐみちゃん(現在なぜか行方不明。よって、暇を持て余したこの先輩が片付けの手伝いに駆り出されたという事の顛末)の話によると、長期休みは必ず実家に帰っているそうだった。そして学校に戻ってくる度、凄まじい勢いで愚痴を放出する。どうやらリンちゃん自身が家に帰りたがっている訳では無く、休みに入ると一日一通の勢いで送られる催促の手紙とそれを遥かに上回る量のメールがうざいから、らしい。箱入り娘なんだねぇ、と言ってみた所、親からじゃなくて弟からですアイツマジで事故ればいいのにと返された事があった。それでも、実家から戻って来たリンちゃんはどこか晴れやかな顔をしているから、仲の良い姉弟なんだと思う。多分。

 「あ、そういえばギター、何か言われなかったの?弟君に」
 「え?あー、気付いて無いんじゃないですかね?新しいギター買ったばっかなんで。それより先輩、何か欲しいものとかあります?今は何も用意してないんで、今度買ってきますよ」

 そそくさと実家の話を切り上げて、キャリーバックの中身を全てベットの上に開けてしまうと、ひとまず作業終了と言わんばかりにリンちゃんはベットの開いている所に腰掛けた。服をきちんと畳直していた私は、まるで洗濯中のお母さんみたいに、畳み掛けの服を膝の上に置いてリンちゃんを見上げる。私を見下ろすリンちゃんから、ふわりと甘いチョコレートの香りがした。甘い香りと共に、舌の上にふとそのキャンディーの味が甦って、私は慌ててリンちゃんから視線を逸らす。再びシャツを畳みながら、「別にいいよ」と何と無く気まずい思いで早口に言った。

 「リンちゃん今日帰って来たばっかりだし、そこまで無茶して祝って欲しいなんて思ってないよ。気持ちだけで十分」
 「えー?そんな大人みたいな事言っちゃって、先輩もうお母さんみたいですよ?女子高生とは思えない貫禄です」
 「それはわざわざ片付けの手伝いに来てあげた私の母性本能に喧嘩売ってるの?」

 畳んでいたシャツから手を離して、もう帰っちゃおうかなアピールをしながらリンちゃんを見上げると、リンちゃんはころりと表情を変えてあああごめんなさい、と両手を振った。唇にくわえていたロリポップを手に取って、「いやいやそういう意味じゃなくて、いやーあたし整理整頓とか全然出来ないから、初音先輩みたいになんでも一人で出来るのって憧れます!良いお嫁さんになりますよねっ!」と何とか私を引き止めようとするリンちゃんに、思わず笑ってしまう。初めから帰るつもりは無かったので、すぐにまたシャツに手を掛けた。どうせ帰っても同室の巡音先輩は帰省から戻って来てないし、一人で迎える誕生日なんて寂しいものだ。

 「でも、なんか無いんですか?欲しいもの。折角の誕生日な訳ですし、遠慮されてもあんまり嬉しくないですよ」

 じっとこっちを見つめるリンちゃんの眼差しに、少しだけ気遣わしげな色が宿っていた。といってもそれは、私が確認しようとすると、素早く瞼の裏に隠れてしまう。きっと、誕生日を祝って貰えない私に気を使っているんだと思う。とりあえず、なんて冗談めかした所で、きちんと祝えない自分にも不甲斐無さを感じているんだろうなぁと、リンちゃんの誠実な優しさを嬉しく思った。本当に、この子は思慮深い癖に明るくて、さっぱりしてるから色んな人に好かれてて、羨ましいなぁと思う。
 リンちゃんはよく、私の事を綺麗で歌が上手くて羨ましい、と言ってくれるけど、実際私にはそれしかないと思う。中身は割と空っぽだ。そう思うと同時に、ふとリンちゃんの中を満たすものはなんだろう、と考える。人工甘味の甘い香りは、普段はボーイッシュな彼女の横顔まで甘くしているようだった。

 「………あ、じゃあ一つ、欲しいものがあるんだけど」

 どうしてこんな事を言ったのか、私にもよく分からない。ただ、ふと思い付いた時、既に唇から言葉が溢れていた。ひょっとしたら、リンちゃんの内側にゆっくりと溜まり、膨れ、とろとろと零れ落ちる蜂蜜のようなそれに触れてみたかったのかも知れない。
 リンちゃんは一瞬瞳を丸くするも、すぐにそれが、誕生プレゼントの話をしているのだと気付くと、「なんですか?」と先を促す。薄紅に色付いた唇の中に、甘い星を含ませて。

 「あんまり高いものは買えないですけど、あたしに買えるものだったら―――」
 「それ」

 気付くと私は、まっすぐにリンちゃんの方を指差していた。リンちゃんは、ぱっちりとした瞳を丸くして、しばらくきょとんと私の指先を見つめる。ぱち、ぱち、と瞳を瞬いてから、「これ、ですか?」とリンちゃんが差し出したのは、きらきらと光る溶けたロリポップ。

 「うん、それ。この間貰った時美味しかったから」
 「え、えー……?こんなので良いんですか?だってこれコンビニで40円ですよ?」
 「良いよ。プレゼントは値段じゃなくて気持ちでしょ?それがいい。それちょうだい」

 指していた指を開き、手を伸ばす。困ったように眉を寄せていたリンちゃんは、やがて身を乗り出して、私の手にそれを渡した。私の指に、少しだけ小さなリンちゃんの指が触れる。「新しいの、多分鞄の中に入ってると思いますけど」となおも躊躇いがちに言うリンちゃんに、「これでいいよ」と繰り返した。

 「ふふ、ありがとう」
 「どういたしまして……っていうかほんっとに、初音先輩って変わってますよねー」
 「んー、リンちゃん程じゃあないと思うけどなぁ、絶対」

 えー?と声を上げたリンちゃんに、小さく笑う。私の手の中には、甘い香りのロリポップ。そっと舌先に乗せてみると、その香りと同じくらい、甘ったるい味がした。いつかと変わらない甘さ。この味に捕らえられてしまった少女の夢は、一体どんな味がするのだろう、なんて、華の女子学生らしくポエジィにチョコレートに思いを馳せてみた。

 日の暮れかけた誕生日、嵐のような後輩と、桜のような先輩に、生まれて初めてサプライズパーティーを開かれて大泣きする、少し前の時間のお話でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++

本当はこの後、ぐみちゃんと巡音先輩がミクさんにケーキを買ってきてあげるくだりとかルカミクシーンとかがあったんですけど、激しく気に入らない&時間が無いで撤去しました。ぐみちゃんはリンちゃんの事をりっちゃんと呼ぶのですよ。初音先輩にコルトガバメントM1911A1のガスガン(18禁)をあげる予定だったのですよ。


そこをカットしたら、お誕生日おめでとう要因が丸々無くなってしまった訳ですが……何にしてもミクさん誕生日おめでとうございました。ルカ誕もカイト誕かなり無理矢理祝ったので、今年こそはミク誕も何かしたかった…!何か出来た!満足!



 

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