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鏡音が日本刀でバーンドーンな話。一応レンリンですよ。見方によってはレン→リンですよ。
俺の中二フォルダは今日も全開です。


 銀色が煌めく。空気を切り裂くように飛んで来た弾丸を受け止め、それを弾く。握り締めた柄から、振動が電流のように伝わって、か細い指を痺れさせた。

 「―――っ、」

 衝撃に、少女は顔を歪ませる。それでも怯む事なく、すぐに顔を上げ前方を睨み付けた。眩しいくらいの月明かり。それを背後にした少年は、黒い銃口を少女に向けたまま楽しそうに笑っていた。そこから放った球を、銀色に光る細身の刀で弾かれたにも関わらず。

 「凄いね、この短い間によく鍛えたもんだ、流石リン」
 「………レン」

 ぎり、と歯軋りする音が聞こえそうなくらいの激情に、リンと呼ばれた少女は顔を歪めた。白いセーラー服は闇の中で異色にはためく。対して、目の前の少年は暗闇の中に完全に同化してしまっていた。恐らく、着ているのは黒い学生服だろう。彼女が最後に見たものと同じ姿。予想はしていたが、じわじわと心臓に溜まり、脳を染めていく赤い感情に少女は奥歯を噛み締める。

 目の前で飄々と笑うこの少年に、全てを奪われた。親も、友達も、育った町も、思い出も。そして、幸せに笑う一人の少女だった、自分自身までも。

 「……そうよ。もう、泣いてるだけのあたしじゃないから」
 「それで、そんな物騒なもの持って追い掛けてきたの?俺を」

 そう言って、場違いな程無邪気な笑みで少年は笑った。その笑みに、少女は益々燃え滾る憎悪を深くする。日本刀を握る指がぎしりと軋む。それは、ほんの少し前まですぐ隣で見ていたそれと、全く同じ笑顔だった。かつては彼女の幸福の象徴だった笑顔。けれど今や、それが殺意の対象になっている。
 それでも、抱き続けた憎悪が全く揺らがないかといえば嘘になる。指先の震えを抑えれば、足が震えてしまいそうだった。喉まで込み上げる、どうしてという悲痛な叫びを必死に堪える。

 かつて、その笑顔の隣にいる自分は笑っていた。写真の中の、幸せそうな自分。手と手を繋ぐことが当たり前で、それが彼女の完成された幸福の形だった。揺らぐことのない筈の至福。あの夜、血に染まり落ちた両親の死骸を見るまでは。


 「そうよ。あたしは、あんたを殺すわ。その為だけに、今日まで生きて来たの」

 泣き叫びながら、両親の骸に取り縋った。赤い満月の夜。彼女を優しく包んでいた世界は全く色を変えてしまった。優しい幸福も柔らかい色も全て無くなり、残ったのは汚い赤と、それに飲み込まれた双子の片割れ。

 「へえ、それは光栄だなぁ、いつかは迎えに行くつもりだったけど、まさかリンの方から来てくれるなんて」

 リンの射抜くような殺意に曝されても、レンは飄々とした態度を変えることはなかった。まるであの頃と変わらない、リンを諌めるような優しい笑みさえ浮かべて、手にしていた銃をあっさりと離す。突然の事に、少なからずリンは動揺した。それは、些細な驚きのようなものであったが、体はほんの一瞬大袈裟なくらい強張ってしまう。まずい、とリンが再び身構えるまでの僅かな間、レンの黒い学ランが、月夜に異様に栄えた気がした。

 「でも、折角リンが追い掛けてくれた事だし。俺も本気出さないとね」

 こんな不粋なもんじゃなくてさ、とレンは落とした銃をローファーの底で踏む。そしてどこまでも嬉しそうに、笑った。リンが確認できたのは、そこまでだった。

 「―――っ!?」
 「リンは努力家だから、きっと沢山努力したんだろうね」

 手にした銀色に再び衝撃。咄嗟に一歩後ろに下がるも、一気に距離を詰めたレンは、リンを逃がさない。二本の刀が月明かりの下で交わり、形を違えた双子の姿を白々と照らす。方や復讐の刃を片手に、方や無差別の殺戮を繰り返した狂気を片手に。かつて重ねた掌が、互いに牙を剥いて殺意を向ける。

 「っ、あたしが諦め悪いの、あんたが一番よく知ってんでしょ!」

 レンに押されていたリンが、不意に刀を引いた。けれど、それ以上足は引かない。殺すと決めた、止めると決めた。かつて、誰よりも愛した半身だからこそ、この手で止めると誓ったのだ。

 あの夜、町は赤に染まり落ちた。死んだのは両親だけでなく、小さな町に住む全ての人間が、たった一人の少年の手で命を絶たれた。生き残ったのは、リン一人。リンと、全ての加害者であるレンだけが、赤い満月の下で取り残されていた。絶望と恐怖に泣きじゃくるリンの頬を撫でて、血塗れの少年は一言『きっと迎えにくるから』とだけ言った。そして、リンを残して、レンは姿を消した。レンの言った言葉の意味など、リンには一つも分からなかった。ただ、レンを止めなければ、レンを殺さなければと。その一心で、リンは幸せだった一人の少女を、心の中で葬った。

 「うん知ってる。でも、俺が執念深い事もリンが一番よく分かってるだろ?」

 リンの攻撃をあっさりと避けながら、それでもレンは笑っていた。嬉しくて堪らないという風に、楽しくて仕方ないという風に。

 あの日、リンが見たのは一夜にして色を変えた世界だった。けれど、レンには初めから世界に色なんて無かった。彼等は冷たく、また残酷だ。理不尽過ぎる世界という名の箱庭。レンに微笑みかけてくれた事など一度もない。
 だから、壊してしまおうと思った。パンドラの箱に大切なものを一つだけしまい込んで、それ以外は全て滅びてしまえばいい。

 「だから、俺の勝ち」

 何度目かにならない太刀筋を受け止めた時、不意に耳元でそう聞こえた。途端、腕に感じていた圧力が消える。押さえ付けていた刀が消えたのだ、とリンが理解すると同時に、鳩尾に重たい衝撃が伝わる。息の詰まるような衝撃に、思わず足元が危うくなる。しかし、それだけで無様に倒れるようなリンではなく、すぐに体勢を整えて間合いを取る事は容易だった。
 けれど、後ろに傾いだ体を、柔らかく引き寄せた腕がリンの自由を奪っていく。懐かしい匂い。触れる感触が、張り詰めていた心を、埋め尽くしてしまう。駄目だ、と思った。頭では分かっているのに、体は一瞬で動くのを止めてしまう。勝ち、とレンは言った。つまり、始めからリンとレンでは賭けているものが違うのだ。リンは、命を賭けて、レンを殺すために刃を振るう。しかしレンには、リンの命など奪うつもりは毛頭無い。
 その腕に抱きしめられる事で、捨てた筈の思い出が色を増してリンの中に襲い掛かる。失った幸せは、彼女にとってもはや凶器だ。たった一晩で、潰えてしまった幸せな未来。理由すらも分からないまま、自分を置いて消えた片割れ。

 「………ど、して」

 滲んだ視界に、聞いてはいけない一言が零れた。一度崩れた防壁は元には戻らず、次から次へと言葉は溢れる。どうして、なんで、あんな事をしたの、あたしを一人にしたの。

 「………ごめんね、リン」

 銀色が、月明かりで妖しく煌めいた。避けなければならない事は、本能的に理解していた。それはまるで、あの噎せ返るような血の匂いの中で見たそれと同じ色だった。絶望と恐怖の渦巻く血生臭い畳。その上に、座り込んだまま見上げた夜明けの色が、都会の空に重なった。

 美しく尖った日本刀の切っ先が、リンの胸元を撫でる。脆い体は刃物の愛撫に堪えられる筈もなく、白いセーラーが裂け、その下に覗く同じくらい白い肌から、真っ赤な鮮血が溢れた。リンはそれを、まるでスローモーションのように見ていた。自分の体から溢れる赤。血塗れの両親と弟。あの時見た錆ついた赤より、ずっと綺麗な赤だった。
 崩れ落ちるリンの体を、抱き留めていたレンの腕がゆっくりと離した。伸ばした腕も虚しく、暗いコンクリートの上に、細い体は呆気なく崩れて行った。どさり、と背中が硬い地面に触れる感触に、ようやくじくじくと熱を持った痛みが神経を支配し始める。それは命に関わるような傷ではなかった。だからこそ、リンは余計に引き裂かれた気持ちだった。まだ足りないのか、と思う。届かない、触れられない、どうしてもその背に追い付くことが出来ない。

 「リン」

 すぐ近くでレンの声がする。朦朧としてきた意識の中で、髪を撫でる優しい指先を感じた。都会にぽっかりと開いた穴のような、大きな空。そこに、レンの金色の髪はまるで星屑のようだった。
 まるであやすように、額に唇が触れる。それは瞼、頬、首筋と場所を変え、やがて鮮血の零れる傷口に辿り着いた。裂けた皮膚に舌が這う感触に、思わずリンの唇から引き連れた悲鳴が漏れる。唇についた赤色を、それよりも鈍い赤の舌が舐めとる。その様子は、正しく獲物を食い荒らす肉食獣で、小さな震えが意識の遠退きかけたリンの背を襲った。けれど、獣は決してリンに噛み付かない。彼女は、彼の獲物でない。獲物ですらないのか、と、何とか言葉を紡ごうと開いた唇からは、掠れた吐息が零れるだけだった。
 抵抗しないリンに、やがてレンは肌を辿っていた唇を離す。力無く投げ出されていた右手を取って、かつてそうしていたように、自分の左手を重ねた。引き寄せたリンの手の甲に唇を寄せる。荒く呼吸を繰り返すだけのリンに、「待ってて」といつかと同じ言葉を繰り返した。

 「全部終わったら、必ず迎えに行くから。それまで待ってて、リン」

 何を言ってるのかなんて、やはりリンには何一つ理解出来なかった。重ねていた掌が離れ、リンを置いてレンは立ち上がる。ふわり、と体に掛けられた学ランに思わずリンは待って、と弱々しく手を伸ばした。けれどそれは、どうしたってレンには届かない。

 「いや、いかないで、れん」

 霞んでいく意識の中、気付くとそんな言葉が零れていた。それに、小さくレンは笑って、やがてその影すら遠退いていく。ああ、また置いていかれてしまった。どれだけ足掻いても、届かない。まだ届かない。痛みに喘ぎながら、じわりと瞼の裏に涙が滲む。奥歯を噛み締め、自分の弱さ、不甲斐無さに涙を零した。殺意を持たなければならないのに、刺し違えてでも殺す気で刀を握らなければならないのに、まだリンは心のどこかでレンを信じている。思い出の中にいる、優しい片割れに戻ってくれる事を、まだ信じているのだ。それでは、敵う筈もないのに。
 それでも、レンを止める事が出来るのは、きっと自分しかいないのだと、彼女はそう理解していた。魂の奥深くで繋がることの出来る双子だからこそ、他の誰にも立ち入る事の出来ない場所がある。そこで、レンを止めなければならない。次はこうはならない。レンを止める。例え命を落としてでも、レンを自分の手に取り戻してみせる。

 町は静かに動き始めた。明けない夜が終わり、朝に向かって徐々に世界は傾き始める。相変わらず、世界はリンに微笑まなかった。暗い闇と錆び付いた色に包まれた世界。その中で、彼女は一人体を丸めて眠っている。いずれ、この世界をもう一度裏返して見せよう。過去を捨て思い出を切り、刃だけに想いを託す。手の甲を瞼に押し当てて、音もなくリンは泣き続けた。寂しい鈴虫が一人、気の早い冬に殺された。

 











 

 

 

 

 

 

 


+++++

戦う鏡音っていいよねと思ったんだ。B★RSのアニメを見ていいなあと思って、合唱B★RSを聞いて書こうと思って、Knifeを聞いてパーンしました。あのレン君美麗過ぎてどうしていいのか分からないですしかし私はミクリン推しである。いやいやそれは関係ない。
あとは殆どCLAMP先生のXという漫画のせいです。昔の親友を止める為に戦うとかその辺り。一応組織設定もあってストーリーみたいのもあるんですけど、全体の物語から見ると鏡音は主役ポジションではないのでお話としては書けないという。っていうかレン君セクハラし過ぎだよ無理にレンリンシーンねじ込むからこんなことに。
 

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