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少し前に書いてた女装レン君とリンちゃんで学パロです。ほぼ私の趣味です。
レンリンなんだかどうなんだかよく分からないです。




 粛然とした教会に、小さな歌声が響く。

 教会には彼女以外人影は無く、つい先程まで陳列していた生徒達はもはや影も残さなかった。厳粛なミサの中で、美しいデュオを響かせていた歌声は、独りではどこか心許ない。まるで、オーケストラホールに響く口笛みたいだ。そう心の中で呟いて、リンは息継ぎの為に空気を吸い込む。ホールに響く高いソプラノが、耳障りで堪らなかった。ちやほやとこの声を持て囃す人間もいない事は無かったが、それを越える歌声が響いてしまえばそれまで、音を辿る喉が惨めなものにしか思えない。
 それでも、二つ音が重なれば、リンはそれで満足だった。リンが歌う理由はそこにしかない。他人の声は例外無しにどうでもよく、ただ自分達の声がよく栄えるという理由で、信じてもいない神を讃える歌を歌っていた。自分一人の歌声なんて、それすらどうでもいい。歌うという行為は彼女にとって、二つを一つにする為の共鳴に過ぎないなのだから。

 

 「ミクのバックコーラスをして欲しいのよ」

 だからこそ、合唱部の顧問であるメイコにそう言われた時、リンはにべもなく嫌です、と即答していた。リンにとって、歌は自分の世界を再構築するものだ。どんなに美麗な歌声であろうと、他人の声は雑音に過ぎない。けれど、その考える素振りすら見せない返答は、明朗な教師の頭を悩ましげに振らせる程に、合唱に手を力を込めるミッションスクールでは異質なものだった。

 「………予想はしてたけど、こうもあっさり断られるとはね。一応言っておくけど、これは随分な抜擢なのよ?普通は高等部からの選出が当たり前なんだから」

 月に一度、学校の礼拝堂で大規模なミサが行われる。そこで、合唱部の中でも選りすぐりの生徒達だけが、聖歌隊として聖歌を歌うことになっていた。学年は様々であるが、けれども確かな実力ある生徒しか選ばれない。中でも、開校以来と呼ばれるミクの歌声は、正しく歌姫に相応しい、高く澄んだソプラノだった。生徒達は誰もがミクに憧れ、上級生ですら、彼女を羨望の眼差しで見つめ、周りを固める事で守ったつもりになっている。お陰でミクは、合唱部の、聖歌隊に選出される数少ない少女達しか近付くことの出来ない神秘的な存在となっていた。
 リンは今、その歌姫に近付く事の出来る、数少ない尊い権利を得たといっていい。普通の生徒ならすぐさま飛び付くであろうその輝かしいチケットを、あろうことか彼女は路傍に投げ捨てたのだ。

 「なんであたしが先輩の為に歌わなきゃいけないんですか。嫌です」

 それだけ言って、もう十分だと言わんばかりに、リンは軽く一礼してから踵を返した。他より優れた才能を持っていようがいまいが、リンにとって他人は他人だった。自分には一切関係ない。けれど、一刻も早くと動いていたその足は、突然張り上げられたメイコの声に、すぐに止まる事になる。

 「一応、レンにも声掛けてるんだけど」

 長い廊下を歩き始めていた足を止め、リンはメイコを振り返る。メイコはやれやれと言わんばかりに呆れてリンを見ていたが、そんな事に気を止める暇はリンにはなかった。先程までのまるで無関心だった瞳が、一瞬にして氷点下まで下がる。その変わり様に、ほんの微かにメイコは瞳を細めた。
 リンは普段、余りはしゃいだ姿こそ見せないが、年頃の少女相応には笑ったり泣いたりする生徒ではあった。けれど、レン、という名前を他人の口から聞いた時のみ、その顔はまるで能面の如くまで冷たく固まる。全寮制の女学院に、他人の干渉を一切受け付けない双子の姉妹。その存在は、様々な憶測をひそやかに学園中に呼び起こしたが、当人達は沈黙を保ったままだった。

 「本当は、あんたの声ってハモりというよりメインパート向けでしょ?だからレンに頼もうかと思ったんだけど、一人じゃ歌わないって言われたの。だからあんたにも」
 「………それで、レンはなんて」
 「リンが良いならって、それだけ言って逃げられたわ」

 リンとレンの歌声は、双子だけあって合わされば素晴らしい旋律を生み出すことが出来る。独唱であっても、それぞれ抜きん出てはいるものの、ミクという歌姫の前では見向きもされない。けれど、デュオならば初音よりも鏡音という言葉が多く囁かれる程に、二人の声の重なりは美しかった。
 リンが聖歌隊に入ることを承諾したのも、レンとのデュオを歌ってくれないかと言われたからだ。人前に立つ事を良しとしないレンが、聖歌隊に入る事にしたのも、また同じ理由だろう。二人はずっと二人だけで、声を合わせて世界を保って来た。なのに、今更他人の介入を許すなんてとんでもない。普段は理解ある、今まで出会ったどの大人よりも自分達の声に耳を傾けてくれるメイコを随分好ましく思っていたリンだが、この時ばかりは殺意すら抱いた。

 

 

 頭に居座った教師の言葉を振り払おうと、リンは眉を寄せて小さく頭を振った。礼拝堂に響いていた歌声が、ふつりと途切れる。
 あの後リンは、同じ言葉だけを繰り返して、逃げるようにその場を立ち去った。ミクのバックコーラスは、去年までは高等部の三年生が一人で歌っていた筈だ。彼女がいなくなって、歌姫はふさぎ込むようにあまり歌わなくなった。その為、教師達は歌姫を再び歌わせようと必死なんだろう。

 きっと、寂しい歌姫はまだ歌わない。彼女の孤独を癒やせるのは、あのたおやかな髪の長い優しい人だけだった。彼女の代わりが見付からない限り、歌姫は永劫その唇を閉ざして沈黙するだろう。
 孤独に与えられた安心だからこそ、失った時は倍辛いのだ。リンはそれを知っている。けれど、だからといって、自分の何よりも愛する半身を差し出せ等とふざけていると思った。自分にとって掛け替えのない半身を、誰かの為の代替品にしようというのか。
 ふつふつと湧き出た苛立ちに、奥歯を噛んだその時、礼拝堂の重たい扉がゆっくりと外側から開かれた。キィ、と掠れた音を立てて、礼拝堂に一筋の光が差し込み、リンの足を照らす。

 「姉さん、ここにいたの」
 「………レン」

 扉の先では、気の早い紺色の冬服に身を包んだレンが、瞬きをしながらリンを見つめていた。スカートの裾は膝を半分まで隠し、レンの足元ではたはたとはためいている。肩より少し長い、癖のある髪も同じように風に揺れる。透き通りそうな程に白い肌は、紺の内からほんの少し出しているだけだった。
 リンは眩しそうに瞳を細めてレンを見上げて、すぐに顔を伏せた。自分の剥き出しの腕を摩る。白い夏物のセーラーは、少女の肌を惜し気もなく空気に曝させる。代わりに紺色のセーラーは、少女の肌を内側に仕舞い込み、触れてはいけない秘密を詰み上げていた。

 「ミサはもう終わったし、礼拝堂は立入禁止の筈だけど」
 「……レンが来てくれないから」
 「僕のせい?」
 「そうよ。レンが来てくれないからいけないの。あたしはずっと待ってたのに」
 「僕は教室で、姉さんの事を待ってたつもりだったけどね」
 「その呼び方止めて」

 飄々として、それでいてどこか困ったようなレンの言葉を遮って、リンは早口に言葉を紡いだ。相変わらず困ったような、それでいて慈しむような眼差しでふと口元を緩めたレンに、言いようのない苛立ちが募る。じわじわとした焦りが指先から這い上がり、無防備な腕を伝ってずるりと心臓に染み込んだ。たいした意味もなく腰掛けた祭壇が、急に憎らしくなってローファーの裏で蹴り付ける。レンがいけないのだ。秘密を守って沈黙しなければならないはずなのに、そんなに美しい首筋を惜し気もなく晒して人を惑わせる。

 しばらく不機嫌に黙り込んでいると、不意に正面に影を感じてリンは顔を上げる。見上げると、教会のステンドグラスから差し込む光を遮って、レンがすぐ目の前に立っていた。リンよりも、少しだけ釣り上がった切れ長の瞳に、涼やかな顔立ち。まだ可愛らしいという言葉が似合うリンの愛らしい容姿に比べ、ほんの少しだけレンの方が甘い凛々しさを持っていた。

 「リン」

 神を讃える祭壇に座るリンの名前を、まるで崇めるようにレンは呼んだ。リンの足元に膝を付き、スカートの上で小さく握られたリンの手に自分の手を重ねる。どうしたの、と優しく微笑み掛ければ、またリンは少しだけ唇を噛み締めた。慰めるように頬を撫でてくる掌に、そっとリンは睫毛を伏せる。

 「……初音先輩のバック頼まれたんだって?」
 「ああ、言われたかもね、そんな事」
 「あたし嫌よ。レンが、あたし以外の為に歌うなんて」
 「分かってるよ、リン」

 不機嫌そうに呟いたリンに、レンは優しく囁いた。重ねていた手を取って、指先を絡めた。しっかりと繋いだ手を掲げるようにリンに示して、レンはゆるりと首を振った。

 「僕の歌はリンのものだから、リンの為以外には歌わない」

 優しく、それでいてどこか嬉しそうに紡がれた言葉に、ならいいんだけど、とリンは物憂げな溜息をついた。それ以外何も言わないまま、不意に握られた手を強い力で自分の方へと引き寄せる。突然の力に抗う事もせず、レンはそのままリンの方に傾く。倒れかけたレンの体を、受け止めるようにリンは抱きしめた。紺色のセーラーから僅かに覗く、白い首筋に顔を埋める。色濃く香る秘密の匂いが、また二人しか立ち入れない禁域を広げていく気がした。

 誰も気付かない禁断の園。神を讃える庭園で、囀るのは清らかな乙女だけだ。そこに一つ、リンは嘘を忍び込ませた。

 「………レン」
 「なに?リン」

 強い力に引かれ、危うくバランスを崩したものの、レンはリンの上に倒れ込んだりはしなかった。リンの腰掛けた祭壇に手を付いて、間一髪でリンに全体重を掛けるのを避ける。けれど、背中に回ったリンの腕を解く事なんて考えられなくて、そのままの状態でそっとリンの髪に頬を擦り寄せた。

 清純を表す白い夏服を、レンは決して着ようとしない。季節に関係なく冬服の黒を纏う生徒は、さぞや教師達を困らせていた。けれど、元々成績も優秀で、体の弱さを理由に従順さをアピールする事には長けたレンは、そこでも上手く立ち回っているらしかった。勝ち気な姉と、大人しい妹。それが、学園が認識した二人の姿であり、彼女達の嘘だった。離れたくなくて、縛り付けておきたくて、リンがついた小さな嘘。それは成長と共に肥大していき、リンを不安にさせる。
 気付かれてはならない。知られてはならない。なのに、いつの間にかリンの細い両腕では、抱きしめる事が出来なくなってきているのだ。柔らかなセーラーに包まれた体つきは、どうしたって彼女や神を讃える無邪気な少女達とは違うものだった。
 セーラー服に隠された、成長を止めない体。埋めた首筋の骨張った感触。一体誰が気付くだろう。天使のように愛らしい顔立ちをした二人の双子の片割れが、林檎を喉に詰まらせた、アダムの原罪を抱えているだなんて。

 「忘れないでよ、レンはあたしの物なの。あたし以外の何者の為にも、レンは生きちゃいけないわ。息を吸ってはいけないの、鼓動一つ許されない。分かるでしょう?」

 リンの言葉に、眩しそうにレンは瞳を細めた。答えは初めから一つしか持たない。レンにとって、神とはリンだ。リンの存在が全てであり、リンに愛される事が、唯一の存在意義だった。束縛は痛みなどではなく、生きる事と同意義である。リンに縛られる事、リンに必要とされる事で、呼吸が可能になる世界。それが、レンの生きている場所だった。

 「勿論。分かってるよ、リン」

 嬉しそうな声で、決まりきった答えを返す。やがてレンの腕がリンの背中に回って、リンの腕とは違った優しい力加減で、リンを抱きしめた。

 どうせ、あと一、二年もすれば、この禁じられた遊びも終わる。それまでは、互いの隣で夢を見ていたかった。そこは楽園か箱庭か。神を讃える聖なる場所で、抱き合う双子は聖書には載せる事は出来ない背徳の存在であった。が、もしこの光景を見る事の出来た人間がいたならば、その美しさに思わず足を止めただろう。そして、背徳の畏怖と嫌悪から、彼女達を引き離そうとしたかもしれない。けれどそこには、相変わらず誰もいなかった。

 

 

 

 


 

 

+++++
ミッション系の学校に通っていた訳ではないので嘘ばっかりつきました。下調べ大事超大事。趣味100%で突き抜けたかったのになんか結果として違うものになってしまったのが悔しいけど上手く直せなかったです。

なんか最近、と言いますか大分昔から、女装レン君だレンカちゃんだととりあえずレン君に紺色のセーラー服を着せたいみたいですが、リンちゃんにだってブレザー着せたいですよ。でも根本的に女子生徒という形が好きなわけで必然的にレン君が女装して女子高に通うという形が一番おいしく感じてしまう訳で。男装リンちゃんはきっと超可愛いと思うんだ…カッコイイ男装リンちゃんも良いけど可愛い男装リンちゃんが好きです先生。あのあれ、本当は怖いグリム童話の、眠り姫みたいな感じのね、舌足らずなのに僕とか言っちゃう感じが堪らんです私は何を言っているんだ。これの反転版みたいな男子校に通うリンちゃんの話も書きたいんですけど、既にレン君がギャップとかいうレベルじゃなくて笑えてしまうのでした。

 

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