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ヤンデレンカちゃんのおはなし!
レカリトでなくレカリンです。リン姉さんです。他意はない。

他のどのレンカリントシリーズとも関係無い単発話です


 わたしの姉さんは、誰にでも優しく、誰にでも明るく、誰にでも愛される人でした。

 幼い頃、姉さんは綺麗な長い髪をしていました。腰まであろうかという長い髪を白いリボンで結わき、愛らしい笑顔で天使のようにはにかむ姉さんは、それはそれは周りの人々を魅了しました。わたし達にはまだ支配者たる存在だった大人すら、姉さんを見るとむっつりとした顔を破顔させ、可愛い子ね、とその髪を撫でました。
 わたしは、それが許せなかった。姉さんの笑顔に勝手に魅了され、揚句それを当然のように自分に向けられたものだと関知がする大人達が。それはお前達の為に作られたものじゃない、と、何度も何度も心の中で彼らを罵倒し、姉さんを怨みました。
 そしてある日、寝ている姉さんに忍び寄って、その長い髪をばっさりと切ってしまいました。目覚めた時、姉さんは泣きました。わたしは、満足でした。姉さんは、美しくあってはいけないのです。姉さんの存在そのものが、まるで至高の芸術のようなものなのですから、この世界に染まってはいけないのです。

 以来、姉さんの髪は肩より少し下の長さを保ったままでした。わたしはそれが嬉しかった。かつて、姉さんと区別が付くようにと、大人に引き裂かれてしまったわたし達の髪の長さは、再び同じになる事が出来きました。揺らぐ事のない鎖状の絆が、また一つ確定されました。
 わたしと姉さんは一卵性の双生児としてこの世に生まれ落ちましたが、わたし達は余りに違い過ぎました。姉さんが明るく慈愛に満ちた天使なら、わたしは人の世の生み出した全ての欲望を生まれ持って孕んだ忌み児です。わたし達を見分けるのに、本当は髪の長さなど必要無かったのです。輝かんばかりの美しい瞳で笑う姉さんの一歩後ろで、まるで泥と憎悪を混ぜて煮詰めたような瞳をしているわたし。美しい姉さんと醜いわたし。大人達は、わたし達を引き離そうとして、わたしの髪を切り落としました。けれどそれは、全く意味の成さない行為でした。わたしは、彼らの思い通りにはなりません。例え全く違えていようと、わたしと姉さんは二人で一つです。離れる事など、初めから許されてはいないのです。

 そして今、姉さんは幻のように美しく成長しました。まるで幻想的な蝶々です。わたしは、そんな姉さんを見ているのが好きでした。その華奢な手足や、白いうなじが、ほんのりと赤く色付く様を1番近くで見ているのが好きでした。
 姉さんはよく笑い、歌うように言葉を紡ぎ、そしてわたしの手を引きました。決してわたしの手元から飛び立つ事は、ありませんでした。しかし。本当は分かっていたのです。姉さんはわたしの手の中に納めておけるような存在でなく、日に日に美しくなっていく姉さんを、世界は放っておいてはくれないのだと。

 わたしは、姉さんを守る為に様々な手を尽くしました。時には姉さんと瓜二つなこの顔立ちを利用して、吐き気がする程汚らわしい肉塊に触れる事もありました。けれど、それで姉さんが守れるなら、わたしは悪魔に魂を売り渡す事すら辞さなかったでしょう。天使のようなわたしの姉さん。何よりも愛しいわたしの姉さんを、世界などに渡して堪るかと、わたしはわたしに出来る最大の事をいつだってしてきたつもりです。
 けれど、悲しい事が起きました。これ程までに愛した姉さんが、わたしの全てを捧げて守り通した姉さんが、遂に再びその髪を伸ばし始めたのです。わたしからゆっくりと飛び立とうと、姉さんはその美しい羽を広げました。わたしは、信じられなかった。信じたくなかった。その透き通った空のような瞳が、薄い幸福の膜を湛えてきらりと光り、淡く染まった頬でわたしに内緒話を教えてくれた姉さんが、わたしは一瞬で憎くなりました。どうしてまたわたしから離れてしまうのか。わたしは、こんなにも姉さんが好きで、姉さんの側にいたいのに、姉さんの清らかな美しさを守っていたいのに、姉さんが返してきたのは自ら自分の価値を貶るような行為です。他人の欲望を塗りたくられ、天使の羽根は再び汚れてしまいました。
 切り落とさないと、と私は思います。けれど、以前のような長い髪は、姉さんにはもうありません。だとしたら、何を削れば姉さんは再び美しくなるでしょう。考えて、考えて考えて必死に考えて、ようやくわたしは答えに辿り着きました。世界を映す、その瞳がいけないのです。惑わされた鏡を断ち切れば、姉さんは再びわたしの手の中で、美しく羽ばたく事が出来るでしょう。


 「レンカ、れんかっ……!やめてっ……ごめんなさい、ごめ」
 「……どうして謝るの?姉さんは何も悪くないの。姉さんは、汚されてしまっただけなのよ。だから、綺麗にしないと」

 見開かれた姉さんの、青い綺麗な瞳がふるふると震えていました。そこからとめどなく零れ落ちる涙が何とも言えず綺麗です。やはり、姉さんは美しい。わたしは自分の至らなさに胸がいっぱいになりました。どうしてわたしは、いつもいつも姉さんを守れないのでしょう。わたしが姉さんを守れれば、姉さんは綺麗な羽根を残したままで空を飛ぶ事が出来るのです。ああ、でも、空を飛ぶ為の羽根なら、切り落としてしまっても構わないかも知れません。どうしたって、地を這う醜いわたしには、一緒に飛んでいく事など出来ないのですから。

 「姉さん、大丈夫よ。心配しないで」

 怯える姉さんを安心させたくて、せめてもの笑みを浮かべて優しく言いました。姉さんが暴れるものだから、手元が狂って切り落としてしまった髪が一房、はらりと白いセーラー服の上に落ちていました。それはいつかの夜のように、煌めく星屑のように姉さんの白い肌に掛かり、とても綺麗でした。左手に握った鋏を降ろし、壁際まで追い詰められた姉さんの正面に膝を付きます。カタカタと小刻みに震える姉さんの頬を、そっと撫でました。姉さんは、何も知らない純真無垢な瞳のまま、わたしを見上げていました。透けるような白い肌と、その輪郭を彩る淡い金色の髪。ほのかに色付いた蒼白の唇。その全てが美しく、わたしはうっとりと姉さんに見惚れてしまいました。わたしの姉さんは、とても綺麗な人です。だから、その内側に流れる赤も、きっと美しいのでしょう。

 姉さんがこれ以上怯えないようにと、セーラーの胸元に結ばれたリボンを抜き取ります。大丈夫、と繰り返し囁きながら、そっと頬に掛かる髪を掻き上げて、姉さんの綺麗な瞳をリボンで覆い隠しました。深い空色の瞳も、これで見納めです。空洞になった眼光には、綺麗な赤い薔薇の花を植えましょう。姉さんには赤がよく似合います。牡丹でもいいかも知れません。椿でも、とわたしがいくらでも空想の世界を広げている間に、姉さんの瞳は完全に隠れてしまいました。目隠しされた状態で、もう姉さんは何も言いません。ただ時折、引き攣った呼吸でその胸を揺らし、小刻みに震えるだけでした。

 「姉さん」

 目隠しされた姉さんの瞳に、そっと唇を寄せました。零れ落ちる涙を指先で掬い上げて、微かな光に晒すときらきらとして綺麗です。わたしの綺麗な姉さん。わたしだけのリン。他の何者にも渡す事はしないのだと、そう心に誓って、わたしは鋏に通した指をそっと開きました。医学書はきちんと読みましたし、後の事は大丈夫だと思います。姉さんは、苦しむでしょうか。きっと苦しんだその姿も、綺麗なのでしょう。

 「愛してるわ」

 そう。誰になんと言われようと、これがわたしの愛の形なのです。わたしは姉さんを愛しています。この世でたった一人のわたしの支配者。地上に下りた破滅の天使。わたしは、その忠実な奴隷です。姉さんを守る為、姉さんをわたしの天使たるものにしておく為ならば、わたしは何を犠牲にする事も厭いません。姉さんを孤高へと高め上げて、降りられないよう姉さんの羽根を毟り取るように。姉さん自身を傷付ける事すら、わたしは厭う事はないのでしょう。何故なら、わたしは姉さんを愛しているからです。この狂おしいまでの愛情が、世界を閉じるには相応しい物語だと、他人事のようにそう思いました。

 

 

 

 


 

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